コロナによる影響、新しい生活習慣によって、多くの企業が廃業に追い込まれています。

さらには、コロナ禍は、普通の不景気とは異なり、業種によって影響の大きさが異なり、
大きく衰退する市場も出てきています。

今回は、そんな衰退が予想されている市場でも、
どのようにしたら収益を維持し続けられるのかについて、

残存者利益にフォーカスして、お伝えします。


1. 衰退市場を見極める3つのポイント

衰退市場とは、今後の成長が見込まれない市場の事です。

では、どのような理由によって市場は衰退していくのでしょうか。
その理由は次の3つです。

ユーザーニーズの変化
人口減
産業構造の変化


ユーザーニーズの変化

例えば、鉄道業界は今回のコロナ禍により
大きな減収となりました。

また、テレワークの常態化により、出勤が必ずしも
必要ではなくなっています。

JR東日本の深沢祐二社長は7月7日の定例会見で
「コロナ終息後も利用は元に戻らない」
と述べています。

このように、ユーザーのニーズが変化することで
需要自体が変化し、衰退へとつながっていきます。

人口減

そもそもの購入者自体が減少することによって、
衰退してしまう市場もあります。
例えば、日本では、子供の数が減り続けていています。
そのような時に、子供用の商品を扱う市場は
日本においては衰退市場となります。

産業構造の変化

世の中では、常に新しい技術や産業が生まれています。
そのため、すでにある産業があたらしく生まれてきた産業に
顧客を奪われる事もあります。
例えば、メールでやり取りしていた内容は、
今では多くのメッセンジャーアプリによって代替されています。
このように、産業構造自体が変化することによって、
とって変わられた産業は衰退します。


プレジデントアカデミー サービス バナー

2. コロナ禍での衰退市場

コロナ禍では、大きな変化が二つありました。
一つは、自粛によって経済活動自体が停止したこと、

もう一つは、家にいることが長くなるような生活スタイルに
多くの人がシフトした事です。

自粛によって、イベント産業や飲食店が
大きな影響を受けました。

さらに、コロナ禍後もコロナ前と同じ市場の大きさには
戻らないと言われています。

二つ目の生活スタイルの変化は、大きな影響をもたらします。
ほとんどの人の生活スタイルが変化することによって、
ユーザーニーズは変わり、産業構造の変化が発生しています。

例えば、テレワークに用いるツールが発展する中で、
鉄道やタクシー業界、航空機産業など
移動に使われていた産業は
今までにない変化にさらされています。

このように、コロナ禍によって、一時的な影響だけでなく、
ユーザーニーズの変化および産業構造の変化も促される時代
となっていることは今回の変化での大きな特徴です。


3. 残存者利益を得る方法

では、衰退していく市場の中では
利益は得られないのでしょうか。
呉服店などは、高度経済成長以降、ユーザーニーズの変化
によって衰退市場となりましたが、いまでも事業は続いています。
すなわち、消費者がいる限り産業は継続するのです。

残存者利益とは、競争相手である他社が撤退した後、
生き残った企業のみが市場を独占することで得られる利益のことです。
残存者利得は衰退市場で発生しやすいと言われています。

かつては複数の企業がプレイヤーとして存在していたものの、
各社が撤退した後に生き残った企業によって得られる利益となっています。

では、どのようにすれば、衰退市場の中で、残存者利益を得られるのでしょうか。

その方法は、次の3つがあります。

・多角化
・ブランディング
・海外進出

多角化

衰退産業の中でも、会社の基幹事業をもとに多角化することで、
活路を見出すことができます。

一つの事業から見方を少し変える事で、違った需要を見つけ、
別の収益をあげることができます。

基幹事業は、衰退市場であっても、そのなかで多角化をし、
会社全体の収益を増やすことができるのです。

また、すでに行ってきた事業の関連事業を行う事で、
専門知識をもっている強味を生かすことができることもあります。

ブランディング

商品のブランディングを行うことによって、
少なくなっている需要の多くを獲得できることがあります。

ブランディングとは、商品の良さをより消費者の目線に立って見直す事です。
この事で、商品自体の質をあげずとも、商品を販売力の上昇が見込めます。

また、ブランド化することで、お客さんがファンとなり、お客さん一人当たりからの
収益の増加を得ることができるなど、同業他社との差別化以外のメリットも多くあります。

海外進出

日本では、人口減少により衰退市場となっている場合が
多くあります。
その時は、海外に目を向けることで新しいお客さんを獲得でき、
利益を得ることができます。

海外進出では、次のような事例があります。
株式会社TTNコーポレーションは、創業80年の老舗畳店です。

TNNコーポレーションは、天然い草製品で
「THE TATAMIFACTORY SINCE 1934」
商品シリーズを作り、ヨーロッパに進出しました。

和とデザイン性を備えた商品は非常に評判が良く、
ヨーロッパでの成功を獲得し、業績を伸ばしました。


4. 残存者利益の獲得に成功した事例紹介3選

残存者利益の獲得に成功した事例:富士フィルム

衰退市場での残存者利益の獲得に成功した事例の
一つ目は富士フィルムです。

富士フィルムは、主力商品の写真フィルムがほぼ消滅し、
衰退市場となる中、事業の多角化によって残存利益を得た企業です。

富士フィルムでは、アンゾフの成長マトリックスに基づいて、
新規事業を分類し、それぞれへの戦略をたてて、進出しています。

【参照】https://circu.co.jp/pro-sharing/mag/article/380/

1つ目の戦略は、
既存市場に既存技術で別サービスを導入する時のものです。

これは、衰退市場の中で、多くの企業が取り入れられる戦略
となっています。

富士フィルムでは、既存の写真フィルムなどの技術を別の形の商品として、
既存の市場に提供しました。

それがチェキです。
チェキは年間500万台の大ヒットを記録し、デジタルカメラの販売台数を逆転しました。

既存の技術、既存の市場でも、
実はマーケティング方法を少し変化させることで、
新たな需要を掘り起こせるかもしれません。

2つ目は
既存市場に新規技術の導入を行う際の戦略です。

富士フイルムは、レントゲンフィルムやデジタルX線画像診断システムの提供を
行っていく中で、医療業界に強い接点を持っていました。

その医療業界に、レーザー内視鏡や医療用画像情報ネットワークシステムなど
新しい技術を提供することで事業の多角化を実現しました。

すでに市場で築いてきたコネクションを生かすことで、
新規技術に基づくサービスであっても、事業化がしやすいかもしれません。

3つ目は
既存技術を新市場に持ち込む方法です。

富士フィルムでは、
既存のフィルム製造技術や光学レンズ技術を生かし、新しい市場に
液晶用フィルムや携帯電話用プラスチックレンズを提供しています。

この戦略では、BtoBであった商品をBtoC向けに販売する際に
役に立つ戦略となっています。

このように、市場のなかでの既存技術の立ち位置を
変化させる事で、売り上げの増加が見込めます。

4つ目は、
新規市場に新規技術を導入するものです

富士フィルムでは、医薬品や化粧品・サプリメントの開発によって、
事業の分野自体を多角化しました。

富士フィルムでは、化粧品の開発でも言えますが、
既存の自社技術を用いて新規事業を立ち上げることにより、
多角化を実現しています。

このように、自社の持つ技術をうまく生かしながら、
フィルム市場という衰退市場の中にあっても、
事業の多角化および残存者利益の獲得に成功しています。


残存者利益の獲得に成功した事例:豊栄工業

【参照】http://www.hoic.co.jp/brand/iiwan.html

既存技術を新しい視点で、新市場に投入し、残存者利益を獲得することも可能です。
この一例としては、愛知県新城市に本社をおく、金属プレスメーカーである
豊栄工業があげられます。

豊栄工業は、1970年に音響機器部品のプレス加工から生業を起こし、現在にいたるまで、
医療機器を含め幅広い分野で金属プレスの技術をBtoBで製造販売しています。

その豊栄工業は実は、iiwanという子供用食器のブランドも保有しています。

2007年より事業の多角化を狙い、それまでのプレス技術を活かして、
植物由来生分解性プラスチックの生産技術開発を開始しました。

その技術を用いて、2011年から植物由来生分解性プラスチック製食器をブランド化し、BtoCで販売を開始しました。
このブランドは、成功をおさめ、現在では全国のセレクトショップ、百貨店で扱われるようになっています。

このように、BtoBに特化した企業であっても、技術の使い方を少し変化させることにより、
BtoCのブランドを成功させ、多角化に成功することもできます。


残存者利益の獲得に成功した事例:株式会社このみ

【参照】https://yokanavi.com/event/85063/

海外進出で成功した事例は株式会社このみです。

このみは、衰退市場の代表格ともいえる制服市場で、学校指定の制服を売るだけでなく、
かわいいから来たくなる制服をモットーに制服風のファッションを展開したことで成功を納めました。

東京カワイイTVのパリプロジェクトにて日本代表に選抜され、
パリにてファッションショー開催したことを
きっかけに海外進出が始まります。

まず、ローマにて開催されるROMICSに出店、制服ファッションショー開催し、
海外展開もアジア方面が追加されます。

海外ではかわいい制服を着た女子高生が登場するアニメを見ることで、
SEIFUKU(制服)が浸透したこともあいまって、海外進出の成功事例となっています。

欧米ではコスプレのように捉えられているようですが、
アジアでは自分で着るファッションとして、10代後半から20代半ばくらいまでの
幅広い年齢層に受け入れられているそうです。


ここまで、衰退市場での残存者利益に関してまとめてきました。

コロナ禍によって大きな変化がおき、突如衰退市場となった市場などもありますが、
少し見方を変えるだけで事業の多角化が可能であったり、海外への道が開けるかもしれません。

この危機をきっかけに自社のサービスをもう一度見直すのはいかがでしょうか。


【ライター】
田中 大貴
株式会社 Urth 最高執行責任者

大学では、建築学を専門としながら、2018年4月からは早稲田大学で「ビジネス・アイデア・デザイン(BID)」を受講。 その後、文科省edgeNextプログラムの一つである、早稲田大学GapFundProjectにおいて2019年度の最高評価および支援を受け、起業。 早稲田大学建築学科では、株式会社エコロジー計画とともに、コンサートホール、宿泊所の設計、建設に取り組んだ。現在は、「〇×建築」をテーマにwebサービスの開発、営業から、建築の設計及び建設物の運営に関するコンサルタントまで幅広い事業を行う。


【監修】
野田 拓志
株式会社 ビジネスバンクグループ
経営の12分野ガイド
早稲田大学非常勤講師

大学時代、開発経済・国際金融を専門とし、 その後「ビジネス×途上国支援」を行う力をつけるために一橋大学大学院商学研修科経営学修士コース(HMBA)へ進学。 大学院時代に、ライフネット生命の岩瀬氏や元LINEの森川氏に対して経営戦略の提言を行い、そのアイデアが実際に事業に採用される。 現在は、「社長の学校」プレジデントアカデミーの事業部長として、 各地域の経営者の支援やコンサルティングを行う。2017年4月からは早稲田大学で非常勤講師として「ビジネス・アイデア・デザイン(BID)」を行う。


プレジデントアカデミー 無料レポート バナー