新入社員教育

 

 

4月を目前にして、新入社員の教育、受け入れに向けて準備をしている企業も少なくないのではないでしょうか?

特に、この春から初めて新卒の採用を行い、自社で育てていくことへの喜び半分、不安半分という方もいらっしゃるかと思います。

一見、新入社員の教育となると、コストと時間をかけて研修をしていく必要があると思うかもしれませんが、闇雲に研修を組むだけでは、実はうまくいかない場合も多くあります。本記事の最後に、コストをかけずにすぐにでも導入できるアクションも記載しておりますので、お楽しみに!

新入社員教育を力入れて行うべき理由

新入社員教育 理由

ではまず、新入社員の教育に力を入れるべき理由について解説します。
新入社員の教育なんだから力を入れて当然だろ、と感じるかもしれませんが
教育が上手くいった場合と、失敗してしまった場合とでは、
会社に与える影響が大幅に異なってくるので改めて確認させてください。

新入社員教育の良し悪しが会社に与える影響力を考えるにあたって、
ダニエル・キム教授の成功循環モデルが非常に役に立つのでご紹介します。

この成功循環モデルを新入社員教育に当てはめて考えると、
教育係が新入社員に対して、どんな初期対応を行うかによって
なんと新入社員の生産性が大きく変わり、最悪の場合、全く成果を出せなくなってしまうのです。
詳しく説明していきます。

新入社員に結果ばかりを求めてしまう場合

新入社員教育 関係の質

 

成功循環モデルでは、相手に対して、関係構築もままならない状態で、結果を求めてコミュニケーションを取ることを危険視しています。
新入社員も人間なので、仕事とは分かっていても、会ったばかりの教育係に数字の報告ばかり求められると気が参ってしまいますよね。
ましてや新卒ならなおさらです。

このように「結果の質」を求めるコミュニケーションから入ってしまうと、お互いの関係の質も下がり、新入社員は態度に出さないものの心の中では教育係に対抗してきたりします。逆に教育係は成果の押し付けをしてしまいます。

その結果、徐々に「関係の質」が悪くなります。

一般的に、人間関係が良くない人の言うことはあまり聞きたくないですから、段々と受け身になったり、怒られないようにと考え始めます。「思考の質」が悪くなるということです。

当然思考の質が落ちると、それに伴う「行動の質」も落ちます。そこには自発的な行動はなく、消極的です。

という一連の流れがあって、結果が出るはずもなく、最終的に「結果の質」が悪い状態が続くというものです。
それに対して教育係が、また結果の話ばかりすると、また関係の質も悪くなって・・・。

このように、最初から結果を求めてしまうと悪循環に入ってしまいます。
新入社員の教育が失敗していると、成果は出ず、会社の利益に貢献もできず、
本人自体のやる気もどんどんとなくなってしまいます。

こんな状態は避けたいですよね。
ではどうすれば良いのか、ダニエル・キム教授は「関係の質」を重視すべきとしています。

新入社員と教育係が良い関係を構築できた場合

新入社員にできるだけ早く高い成果を発揮してもらうために、
教育係はまず「関係の質」を向上させる必要があるとダニエル・キム教授は言います。

初期の段階で、自己紹介や対話などに努め、お互いに尊重できる関係になることができれば
高い「関係の質」を築くことができるでしょう。

関係が良好な人に言われたことはスッと自分の中に入ってくることが多いですよね。
そのため、新入社員は教育係からの指摘やフィードバックを前向きに捉え、良い気づきやアイデアに発展させてくれます。
これが高い「思考の質」です。

良い思考から生まれる行動は、筋の良い仮説であることが多いので、自ずと「行動の質」も高くなります。
行動が良いと結果が良くなるケースも多く、「結果の質」が上がるのです。
すると、さらに教育係への信頼も増し「関係の質」が向上していくことになります。

このように、新入社員の教育において最初期の段階では関係の質を高めていくことが好循環を生み出します。
新入社員の教育が成功すると、成果も徐々に出てきて、会社の利益にも貢献し
本人のやる気もますます上がることにつながります。

こんな状態を目指していきたいですよね。
では、良好な関係構築をするためには
何をすべきか、何をすべきではないのか、解説していきます!

  

新入社員の教育が上手くいく3つのポイント

仕事の目的や意義を新入社員に理解してもらう

 

新入社員の教育において、最初に重要になってくるのは、仕事の目的や意義を新入社員本人に理解してもらうことです。
仕事の目的や意義などを省略して作業手順だけを教えてしまう振る舞いはやめるべきです。
これを繰り返すと、新入社員は言われたことをただこなす、いわゆる「指示待ち人材」になってしまいます。

皆さまも部下や後輩から、「私は言われた通りにやりました」という言葉を聞いてがっかりしたことはないでしょうか。

新入社員が自力で仕事の目的や意義に気づくのは非常に難易度が高いことです。そのため、作業の詳しい指示をする前に、教育係が意識して仕事の目的や意義、最終目標など、仕事の全体像を伝えることが重要です。

新入社員教育の計画を作成する

新入社員を教育していく際には、必ず育成計画が必要です。育成計画がない状態で指導を行うと、どうしても指導内容が場当たり的になるため、効果的な育成が実現できません。

また、計画を立てる際の最大のポイントは、「いつまでにどうなってほしいか」を設定し、それに向けた逆算として、本人にどのような知識・スキル・業務が必要かを設計していくことです。こうした計画の作成や、策定した計画を他のメンバーや上司、その他関連各所に共有する過程を、会社としてバックアップできる体制を整えましょう。

新入社員本人と計画を共有する

新入社員を教育していくための計画が完成したら、その計画を新入社員本人と共有しましょう。
もちろん、細部まで共有する必要はありませんが「いつまでに、どの程度の水準を目指してほしいか」ということは伝えるべきです。

相手も人間なので、自分の行動がどこに向かっているのか、いつまでにどんな状態にならなくてはならないのか、分からないまま暗中模索で仕事をするのは難しいです。

そのため、しっかりと期間と目標を設定し、合意を取ることが大切になります。いつまでにどの程度の水準か、というのが明確であればあるほど、現状との比較がしやすいため、できるだけ具体的な数値を設定してあげるのが良いでしょう。

新入社員教育でやってはいけない2つの行為

新入社員教育 禁止行為

新入社員に完璧な指示出しをしてしまう

作業内容を説明するだけでなく、新入社員の頭で考えさせる機会を作ることも大切です。仮に失敗してしまった時は、どうしてそうなったのか理由を考えさせましょう。それを次に活かし、成功できるように導く必要があります。

新入社員が教育係以外と交流していない

新入社員が抱える悩みの多くは、人間関係だといわれています。日頃から近い距離で接する教育係は、新入社員が社内で良好な人間関係を築けるようにサポートすることも使命のひとつです。人間関係で困っていることを聞いたり、自分が信頼している人や上司に新人を紹介するなども有効なサポートです。

新入社員だけでなく教育係をサポートする -経営陣・マネージャー-

新入社員教育 経営陣

他人に指導することは、自分の業務をもくもくと取り組むのとは異なるスキルが必要になります。
そのため、教育係に指導力向上の研修を受講させ、スキルを身につけることも効果的です。

そこで得た指導のスキルは、新入社員教育のみならず、その人に部下ができたときにも役立てることができるでしょう。
また、受け入れる部署の上司に対し、受け入れ体制を構築するための説明会や相談の時間を用意することもあわせて行うと、よりスムーズな新入社員教育が可能となります。

教育係同士が悩みを相談・情報交換できる場を用意する

新入社員を指導する側の社員も、指導する側に立ってみて初めてわかることがたくさんあります。
そのため、日々悩みながらトライアンドエラーを繰り返すことになるでしょう。

しかしながら、うまく指導ができず壁に当たっても、それを相談できる場がなく、教育係が一人で抱え込んでしまう、という課題もよく伺います。

そこで会社側は、他の教育係との情報交換の場や、悩みごとを相談し合える場を定期的に設けるとよいでしょう。
教育係同士の横のつながりを強化することにより、職場全体で新入社員を育成しているのだという一体感の醸成も期待できます。

新入社員教育で関係を深める小さな行動

新入社員教育 小さな行動

ここまで、新入社員の教育において積極的に行うべき行動と避けるべき行動、会社としてのサポートについて解説しました。
少しまとまった準備が必要なものも多かったですよね。

そこでこの章では、もっと簡単に行える
新入社員との「関係の質」を上げるアクションをご紹介します!

・ランチに誘う
・日常の雑談をする
・座席の配置を考慮する
・自己開示を少しずつ行う

どれも特別な準備が必要のないものになりますが、
大切なのは、新入社員と教育係の心理的な距離をゆっくりと近づけるための行動を取ることです。

仮にランチに行ったとしても、仕事の改善点や指摘ばかりしていたら「関係の質」が全く上がりませんよね。
話すことは、教育係自身の話だったり、新入社員の趣味の話だったり、仕事の役職を度外視して会話ができると関係の質が上がります。

何か一つでも取り入れていただけると幸いです!

まとめ

いかがでしたでしょうか?
今回の記事では、新入社員の教育についてうまくいく方法、失敗しやすいパターンについてご紹介させていただきました。

研修を闇雲に組むのではなく、新入社員にどうなってもらいたいのか、そこに向けてどうやって教育していくのか、教育のレベルを更にあげるためには何ができるのか、常に思考し続けて実行するのが重要です。

今回の記事で何か一つでも参考になると幸いです!


【ライター】
三富 大雅
早稲田大学スポーツ科学部
実践起業インターン【REAL】2期生
ばあごはん副代表

大学では、健康行動科学を専攻、特に「座り過ぎが身体へ及ぼす影響」について研究。早稲田大学×株式会社ビジネスバンクグループによる実践的な起業プログラム『実践起業インターンREAL』の二期生。シニア×学生のコミュニティ創生を目指す”ばあごはん”の副代表を務める。


【監修】
野田 拓志
株式会社 ビジネスバンクグループ
経営の12分野ガイド
早稲田大学非常勤講師

大学時代、開発経済・国際金融を専門とし、 その後「ビジネス×途上国支援」を行う力をつけるために一橋大学大学院商学研修科経営学修士コース(HMBA)へ進学。 大学院時代に、ライフネット生命の岩瀬氏や元LINEの森川氏に対して経営戦略の提言を行い、そのアイデアが実際に事業に採用される。 現在は、「社長の学校」プレジデントアカデミーの事業部長として、 各地域の経営者の支援やコンサルティングを行う。2017年4月からは早稲田大学で非常勤講師として「ビジネス・アイデア・デザイン(BID)」を行う。


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