人材育成に取り組もうと思っているけど、課題がたくさんあると聞いて不安になっている方も多いのではないでしょうか。今回は人材育成の4つの課題とそれぞれの解決策、成功につながるポイントを解説します。人材育成に取り組もうと思っている方はぜひご覧ください。

人材育成とは

人材育成とは

人材育成とは、社員を企業に貢献できる人材に育てること。つまり、企業が必要な成果を得るために、必要な人材を育てることです。例えば、人数が少し増えてきたら管理職や中堅社員を、新卒採用を行うようになったら新入社員を育てるといったことが挙げられます。

人材育成と一言でいっても誰に対して何の目的で行うのかで、どんな取り組みをするかは変わってきます。管理職や中堅社員を育成したいのであれば、さらなる専門的なスキルや他メンバーのマネジメント、新入社員であれば社会人の基礎やマナーの習得などが目標となるでしょう。

人材育成を行う目的

人材育成を行う目的

人材育成を行う目的として「能力の向上」と「社員の退職の予防」の2つがあります。それぞれ解説します。

能力の向上

現在日本は働き手が減少傾向にあります。そのため、限られた人材をどう育成していき、どのように利益を最大化していくかが、企業の成長に直結します。企業をさらに成長させていくには、人材育成は必要不可欠です。

社員の退職の予防

終身雇用が崩壊している現在では、以前よりも転職のハードルが低くなっています。近年では「成長できる環境がない」という理由で転職する人も多いようです。

パーソルキャリアが運営する転職サービス「doda」が発表した転職理由ランキングでは、6位に「スキルアップしたい」、8位に「社員を育てる環境がない」という理由がランクインしています。

このように、人材育成の環境がないと離職率が高まる可能性があります。また、優秀な人材ほどさらなる成長がスキルアップを求めていることが多いので、そのような社員を逃さないためにも、人材育成は行う必要があるでしょう。

人材育成の課題

人材育成の課題

ここからは人材育成の課題と解決策をそれぞれ解説していきます。人材育成の課題は大きく分けて4つあります。

日常業務に追われて人材育成に割く時間がない

先ほども解説したように、現代の日本では働き手が減少傾向にあります。働き手が減ったことで、一人あたりの業務量が増え、人材育成を担当する社員に時間的な余裕がなくなり、社内で教えるという時間を割くことができないことがよくあります。

解決策
人材育成を担当する社員をあらかじめ決めておき、他の人に任せるようにする、業務の効率化を行って業務時間を短縮するなどが挙げられます。これらは仕組み化によって行えるようになります。

仕事の仕組み化〜経営を効率化するために社長が行うべき仕組み化とは?〜」では仕組み化について詳しく紹介しているので、詳しく知りたい方はぜひご覧ください。

人材育成を担当できる社員がいない

人材育成を担当できる社員がいないというのもよくある課題です。人材育成をしようと思ったときに、理由なく管理職や人事に任せてはいけません。

解決策
一番の解決策は、人材育成を任せる管理職や人事の教育をすることです。人材育成のための研修をすることで、必要なスキルが身につき、任せることができるようになるでしょう。

人材育成の担当者を教育するノウハウや余裕がない場合は研修会社に外注したり、研修サービスを利用するのがおすすめです。

このとき人材育成そのものを任せるのも一つの手ですが、そうすると人材育成のたびに費用がかかってしまうので、人材育成担当者のための研修で利用するのが費用削減につながります。

人材育成の目標が定まっていない

人材育成の目標が定まっていないと育成する側、される側両方に悪影響があります。

目標が定まっていないと育成する側は、どんなことをすれば良いのか定めることができず、必要な制度や環境を用意することができません。非計画で非体系で目標を定めずに形骸化した人材育成を実施してもほとんど意味がありません。

一方、人材育成をされる側は目標が定まっていないと、何を目指してその研修や教育プログラムに取り組めばいいかわからなくなってしまい、意欲の低下につながります。

解決策
まずは自社にどんな人材が必要なのかを分析しましょう。ほとんどの職場では経営側と現場にはギャップがあることが多いです。例えば、経営側は管理職が足りないと思っていても、現場では専門的なスキルを持った手を動かす人材がほしいと思っている場合などです。

分析のためには、経営側と現場のギャップを知っておくことが必要なので、社員にヒアリングなどを行って、どのような人材やスキルが必要かを見極めましょう。

また、人材育成を行った後の具体的な人物のイメージ像を持ってもらうことも大切です。目指すべき人が社内にいる場合は、その人のことをイメージしてもらい、社内にいない場合は、できるだけ言語化しておきましょう。

部署や年齢、職種、ポジション、知識やスキルのレベルなどを明確にしておけば研修を受ける側もイメージしやすく、積極的に取り組みやすいでしょう。

社員の学習意欲が低い

社員の学習意欲が低いことも人材育成の課題です。先ほど解説した目標が定まっていない場合で学習意欲は低下しますが、それ以外にも評価制度と先輩社員の姿の2つに影響されることがあります。

例えば、成果のみで評価していた場合、どれだけ熱心に取り組んでも成果が出なければ一切評価されません。そうなると「何をやっても無駄だ」「一生懸命やってることが評価されないから適当にやればいいや」とモチベーションが低下してしまいます。

そうなると、もちろん「新しいことを学んでも意味がない」と思うようになり、人材育成を行っても意味がなくなります。

また、特に新入社員は先輩社員の姿をロールモデルとして捉えたり、自分の未来像だと思ったりします。先輩社員が仕事に希望を持っていなかったり、ただたんたんと目の前の仕事をこなしているだけだと「自分も先輩社員たちのようになるのか」とモチベーションが低下します。

解決策
先の「熱心に取り組んでも成果が出なければ一切評価されない」というケースにおいては、新しいことにチャレンジしたことを評価するような制度にしたり、評価方法そのものを見直すのが良いでしょう。

先輩社員の姿については、場合によっては大きな改革が必要になることがあります。その場合はなぜ先輩社員が希望を持っていないのか、モチベーションが低下しているのかの原因を探る必要があります。ヒアリングなどをして原因をしり対応していきましょう。

人材育成の手法

人材育成の手法

人材育成の課題を洗い出し、どのような目標を設定するか決めたら、どのような手法を用いて人材育成を行うのかを決める必要があります。ここでは人材育成の5つの手法をそれぞれ解説します。

OJT

OJTの特徴は現場で使えるスキルが身につくことです。今の仕事で使用する知識やスキルがすぐに身につくため、即戦力を育てたいと思っている会社におすすめです。

一方、現場で働く人間が教えるので、成果にばらつきがあったり、教える側の人間の時間を予想以上に使ってしまうデメリットなどもあります。このデメリットを払拭するには、教育する側の体制や環境を整えたり、マニュアルをあらかじめ作っておくことで時間削減を行うのが良いでしょう。

Off-JT

Off-JTとは、職場以外で行う研修などを通じて、人材を育成する手法です。OJTとは反対に体系的な知識やスキルが身につく一方で、今の仕事に使えるものを学習できるとは限らないことが特徴です。

育成の成果が出るまでに一定の期間が必要になってくるので、即戦力よりは長期を見据えて必要な人材を育成しておきたいという企業に向いています。

目標管理制度

目標管理制度とは、社員自身に目標を決めてもらい、その進捗や達成度合いによって評価をする制度のことです。社員自身に目標を決めてもらうことで、自主性や意欲を育むことができます。

一方で、社員の目標が組織の目標と合致しているか、社員一人ひとりにフィードバックをするため、管理側の負担が増えるなどのデメリットもあります。そのため、ある程度組織が大きくなった会社におすすめの方法です。

メンター制度

メンター制度とは、違う部署の社員をメンターにして新人のフォローなどを行う制度のことです。この制度は離職率を低下させつつ育成できます。なぜなら、同じ部署では相談しづらいことも、他の部署の人には相談しやすいこともあるので、新人の悩みの解決に向いているからです。

一方で、メンター側は自分の業務に関係ない新人の業務に関する理解が必要になってきます。メンターの負担が大きいのがデメリットでしょう。

eラーニング

eラーニングはインターネットを使って人材育成を行う方法です。テレワークを行っている企業はeラーニングを行うのが良いでしょう。テレワークを行っていない企業でも、eラーニングは導入の手軽さから気軽に行うことができます。

一方で実践的なスキルは身につかないので、eラーニングで学んだことを活かせるような環境づくりが必要になってきます。

まとめ

人材育成の課題や解決策にはどんなことがあるのか、どのような手法で行われているのかを紹介していきました。人材育成は短期ではコストがかかってしまいますが、長期的に見ると会社の利益につながる施策です。今回ご紹介した内容をもとに、人材育成を行ってみてください。


【ライター】
佐藤みちたけ

大分出身のライター。起業のワークショップなどを通じて、学校教育に違和感を覚え、高校を中退。その後上京し、17歳の若さでライターとして生計を立てる。現在では、様々な企業や団体でインタビュー記事の執筆や、Webメディアの運営などを行なっている。


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