ブランディングとは「他社との差別化を実現する」ための効果的な手法です。他社にはない強みを持っていても、それに気づけずにブランディングに失敗している会社は数多くあります。そこで今回は、企業ブランディングに必要な5つの力を解説します。ぜひ、企業ブランディングをする際の参考にしてください。

企業ブランディングとは


そもそも企業ブランディングとは何なのでしょうか。一言でいうと「顧客が企業に持つイメージ」です。企業ブランディングを行うことで、様々な恩恵を受けることができます。

企業ブランディングに関することは、顧客向けに行う「企業ブランディング」と社員など社内に向けて行う「インナーブランディング」の2つのブランディングの方向性があります。それぞれ詳しく解説していきます。

一般的な企業ブランディング

企業ブランディングを行うことで受けられる恩恵として大きいのが「人材採用」と「マーケティング」の2つです。

株式会社i-plugが2021年卒の就活生に実施したアンケートによると、約6割が「長時間労働の有無」「有休取得」の2つを気にしているそうです。もし新卒採用をしたい場合は、この「長時間労働の有無」「有休取得」の2つを発信し就活生に届けることで、企業ブランドの向上に繋がるでしょう。

また、マーケティングの観点から見ても企業ブランディングは大切だと言えます。現代では、1種類の商品をとても多くの企業が販売しています。競合がいない状態はめったにありません。例えば、枕ひとつとっても多くの企業が販売しています。顧客にとっては、どれも同じに見える可能性が高いでしょう。しかしそのときに「この企業いい取り組みしていたな」と良いイメージがあることで、購入される可能性は高まります。

ほぼ同一の商品があったとき「我社の目標は利益を10億円に増やすこと。そのために毎日12時間働いています。」という会社と「我社の目標は社会をより良くすること。そのために、貧困の国の支援をしているNGOに100万円寄付しています。」と目標を掲げている会社だとしたらどちらを選ぶでしょうか。おそらく後者を選ぶ人が多いのではないかと思います。

このように企業ブランディングを上手に行うと、様々な恩恵を受けることができます。

企業ブランディングと商品ブランディングは別

一方でよく企業ブランディングと混同されるのが商品ブランディングです。企業ブランディングは会社のブランディングに対し、商品ブランディングは商品や製品のブランディングのことを指します。そのため、商品ブランディングは企業ブランディングに比べて寿命が短いという欠点があります。

商品ブランディングと企業ブランディングをうまく組み合わせた事例として挙げられるのがAppleのiPodの事例です。Appleは音楽を聴くiPodを発売しました。このiPodでAppleを知ったという人も多かったでしょう。

Apple社は、iPodの商品ブランディングを行うと同時にAppleという企業ブランディングも行いました。その結果、iPodという商品ブランドからAppleという企業ブランドへの顧客の移行を見事に行い、現在のブランドを築きました。

現在ではiPodよりもiPhoneやMacの方が人気があることが、iPodの商品ブランディングは寿命が来ていること、また企業ブランディングの方が寿命が長いことを証明しています。

インナーブランディング

インナーブランディングとは、顧客ではなく社内向けに行うブランディングのこと。企業理念やビジョンなどの目に見えない価値を社員に理解してもらう活動です。一見、関係のないように思えますが、インナーブランディングを行うことは企業ブランディングに繋がります。

また、インナーブランディングを行うことは、社員が会社のことを自分ごと化して考えることにも繋がります。つまり、インナーブランディングを行うことで社員が企業のブランドやビジョンに基づいた行動をすることで会社の目標を達成でき、ブランドが確立していくのです。

社員が会社のことを自分ごと化するのに加えて「あの会社の人は楽しそうに仕事をしている」とイメージがつけば、その会社に入りたい人も多くなるでしょうし、社員自体も楽しく働いているためモチベーアションアップに繋がります。

このように、インナーブランディングと企業ブランディングは密接に関係しているのです。

企業ブランディングに必要な5つの力


ここからは企業ブランディングに必要な5つの力「商品力」「表現力」「伝達力」「チーム力」「徹底力」をご紹介します。これらの力をつけることで企業ブランディングは格段に成功しやすくなるので、是非参考にしてください。

商品力

商品力とは言葉の通り商品の魅力そのものです。企業ブランディングを確立するには、商品の魅力を高めることが欠かせません。なぜなら、どれだけ商品を魅力的に見せても、購入したときの感想がその魅力に劣っていれば、商品にリピーターはつかないからです。結果としてブランドも確立されません。

商品力は企業ブランディングの根幹なので、まずは商品力を高めましょう。

こちらの記事では企業ブランディングに必要な「商品力」について詳しく解説しています。こちらもご覧ください。

https://bbank.jp/president-ac/freereport/keieitoha.html

表現力

表現力は商品の魅力を効果的に伝える方法のことです。例えば、ターゲットに衝撃的な体験をしてもらうと、記憶に残りやすく商品の魅力も伝わるのではないでしょうか。では、衝撃的な体験とはどのように生み出せばいいのでしょうか。

衝撃を与えられる1つの方法として、キャッチコピーがあります。「〇〇(自社の業界)業界の✕✕(他業界のブランド)」というキャッチコピーは、覚えやすく記憶に残りやすいでしょう。例えば、ブランド会社として活躍しているよなよなエールは「ビール業界のハーレー」と自分たちのことを呼んでいます。

伝達力

伝達力とは、いかに商品のことを「伝えやすいか」ということです。掃除機で例えると、掃除機のほとんどは取ったゴミがたまる部分を見えなくしていました。ゴミは見えても気分がいいものではないからです。

しかし、ダイソンはあえてゴミがたまる部分を透明にしました。その部分を透明にすることで、ゴミがどれだけ取れているかが視覚的に伝わりやすく、他者に簡単にその魅力を伝えることができるようになったのです。

このように、商品や会社の魅力をどれだけ口コミしやすいかもブランディングに関わる大きな要因の1つです。

チーム力


ブランディングが成功している会社の多くはスタッフが自社のファンである事が多いです。では、スタッフを自社のファンにするには5つの秘訣があります。

  • ミッションに共感
  • 採用時に価値観が合わない人を入れない
  • 悪口を言わない
  • 喜びの声を集める
  • 上司が無条件に部下を愛する

こちらの記事ではチーム力を高めるための「チームビルディング」について詳しく紹介しています。
https://bbank.jp/president-ac/contents/teambuilding/42/

徹底力

徹底力とは「こだわり」です。こだわりとは一言でいうと「100-1=0」と考える姿勢のこと。マイナス1点をとってしまうとブランドは一瞬で0点になるということを肝に銘じて徹底していくことが大事です。経営者のこだわりが弱くなると、スタッフたちのこだわりも一瞬にして崩れ去っていきます。人の基準というものはすぐに下がってしまいます。
会社全体で譲れないものを持っていると「あの会社は〇〇なところがいいよね」とブランディングに繋がるでしょう。

おわりに

企業ブランディングとは、一般的な企業ブランディングの他にもインナーブランディングや商品ブランディングなどがあります。今回は企業ブランディングについて解説しました。

企業ブランディングには、「商品力」「表現力」「伝達力」「チーム力」「徹底力」の5つの力が必要です。ぜひこの機会に自分の会社はどの力が足りていないのか、見直してみてはいかがでしょうか。


【ライター】
佐藤みちたけ

大分出身のライター。起業のワークショップなどを通じて、学校教育に違和感を覚え、高校を中退。その後上京し、17歳の若さでライターとして生計を立てる。現在では、様々な企業や団体でインタビュー記事の執筆や、Webメディアの運営などを行なっている。


【監修】
野田 拓志
株式会社 ビジネスバンクグループ
経営の12分野ガイド
早稲田大学非常勤講師

大学時代、開発経済・国際金融を専門とし、 その後「ビジネス×途上国支援」を行う力をつけるために一橋大学大学院商学研修科経営学修士コース(HMBA)へ進学。 大学院時代に、ライフネット生命の岩瀬氏や元LINEの森川氏に対して経営戦略の提言を行い、そのアイデアが実際に事業に採用される。 現在は、「社長の学校」プレジデントアカデミーの事業部長として、 各地域の経営者の支援やコンサルティングを行う。2017年4月からは早稲田大学で非常勤講師として「ビジネス・アイデア・デザイン(BID)」を行う。


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