Pull型営業とは?Push型営業とは?企業経営における自社営業スタイルの確立をするには

皆さんが、営業と言ってよくイメージされるのが、飛び込み営業やテレアポなど、商品・サービスを売り込む形の営業ではないでしょうか。

そのような営業は、Push(プッシュ)型営業と言われます。

その一方で、お客さんを引き込む営業手法、Pull(プル)型営業に取り組む企業も増えてきています。

今回は、プル型営業の特徴やメリット・デメリット、具体的な手法と共に自社の営業スタイル確立に向けたヒントをご紹介します。

Pull型営業とPush型営業とは

push pull

まず、プル型、プッシュ型のそれぞれの営業手法の特徴を取り上げます。

pull型営業とは

プル型営業とは、インバウンド営業とも呼ばれます。その手法は、顧客が自らインターネット等で情報を収集することが一般的になったことで普及しました。顧客自らが情報収集を行うので、資料のダウンロードなどの行動をとってもらい、そこから顧客のメールアドレスなどの情報を取得した上でアプローチをすることで、購入へと結び付ける営業手法です。

push型営業とは

プッシュ型営業は、プル型営業とは異なり、顧客から情報を求めてもらうのではなく、営業パーソンが顧客に対しアプローチをかけることで購入へと結び付ける営業手法です。こちらの営業手法は、インターネットの普及以前から、飛び込み営業やチラシの配布など、昔ながらの営業の方法として様々な形で行われています。

pull型営業のメリット・デメリット

pull型営業

インターネットの普及やSNSの普及によって、顧客が日常的に検索、すなわち情報収集をすることで購入までいたるようになりました。そのことで、広まることになった、まず顧客に情報収集してもらってから、購入してもらうプル型営業ですが、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。

pull型営業のメリット

プル型営業の大きなメリットは次の3つです。

  • 営業工数の削減
  • アポイントメントの獲得率の向上
  • 成約率の向上

営業工数の削減は、次のような方法で実現できます。

まず、プル型営業では最も率が低くなる、営業パーソンの接触がない時点でのアポイントメントの獲得を最初にすることをしません。まずは、情報発信を行い、顧客が自社の商材に興味を持ってもらうことを促します。そのうえで、資料のダウンロードなど何かしらのアクションをとってもらい、企業と顧客との接触があった上で、初めて営業パーソンがアポイントメントの交渉を行います。

この手法をとることで、アポイントメントの獲得で最も工数がかさむ原因である、興味のない顧客へのアプローチを防ぐことができます。そのため、プル型営業では工数を減らすことができるのです。

次に、アポイントメントの獲得率の向上ですが、これはまずアプローチ数が少ないことが要因になります。プル型営業では、営業パーソンから積極的に声をかけることはしないため、そもそものアプローチ数が少なくなります。そのため、獲得率はプッシュ型の営業に比べて大きく上がることとなります。

また、顧客側が、情報収集を行い、ある程度競合との比較もおこなっていることが多く、その時点では、直接、話を聞きたくなるというのもアポイントメントの獲得率をあげる原因となります。

最後に、成約率の向上ですが、こちらも顧客自ら情報収集を行い、他社との比較をしたうえで話を聞いているため、商材への理解やそれによって解決できる課題への理解も高いため、商談をしてから成約に至る率が比較的高くなるというのが特徴があります。。

pull型営業のデメリット

様々なメリットがあるプル型営業ですが、デメリットももちろんあります。次の3つがプル型営業のデメリットになります。

  • 問合せ数のコントロールが難しい
  • 立ち上げまでに時間がかかる
  • 施策に立案・実行に多くの知識が必要になる

プル型営業を実施する中で、最も難しい課題がこの問合せ数の制御が難しい点です。最初のアポイントメントの獲得や営業パーソンが接触する対象の数が、顧客の情報収集というなかなかコントロールしづらい要因で決まるからです。

例えば、資料をダウンロードしてもらうために様々な記事を書いていても、なかなか顧客の求める情報に刺さらず、ダウンロードしてもらえないこともあります、その一方で、有名人やテレビの影響など、まったく外部の要因で急に検索されるようになり一気にアポイントメントが増えることもあります。

このように、外部要因に左右されるため、アポイントメントの獲得が必ずしもコントロールできないという面があります。この課題は、人的リソースが豊富な大企業では大きな影響にはなりませんが、人的リソースの少ない中小企業では大きな影響となります。

2点目は、立ち上げまでに時間がかかることです。顧客が情報を収集し、資料をダウンロードしてもらうなどの行動をとってもらうには、まず記事などを知ってもらい、内容を読んだうえで信頼してもらい、商材の必要性を感じてもらう必要があります。そのような状態を作るためには、知ってもらい、信頼を得るような情報発信を続ける必要があります。

これは、一日二日でできることではなく、数カ月もしくは一年ほどかかることになります。そのため、情報発信では多くの人ではなく、狙っている特定の顧客に対して効率的な情報発信をすることが重要になります。

3点目は、プル型営業の施策の立案・実行には多くの知識が必要になることです。プル型営業では、まず知ってもらい興味を持ってもらうための施策、すなわちマーケティング施策が必須となります。このマーケティングの施策では、知ってもらうにはどのような広告媒体を用いるべきかや、そもそもどのような人に情報を届けたいのかなど、細かな知識と経験が必要になります。

また、どのような媒体で情報を収集し、資料のダウンロードまでしてもらった人には、どんなアプローチ方法で営業パーソンがアポイントメントの獲得を打診するかなど、動かしている施策をチェックし、改善する人材が必要になります。

電話をかけたり話をうまくして、聞いてもらうようになるなどの技術だけでなく、大局を見て実施内容を判断・見直しをする人材が必要となるため、プル型営業を実施するには、この活動に必要な知識・経験を持つ人材に働いてもらうことが重要であり、そのための人材獲得や育成も難しいのが難点です。

push型営業のメリット・デメリット

push型営業

インターネットの普及やSNSの普及以前から行われているプッシュ型営業ですが、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。

push型営業のメリット

プッシュ型営業のメリットは以下の3つです。

  • アポイントメントの獲得数のコントロールがしやすい
  • アポイントメントの獲得のターゲットを絞れる
  • 潜在的なニーズの掘り起こしができる

まず、アポイントメントの獲得数のコントロールがしやすい点がメリットとしてあげられます。これは、そもそも顧客との最初の接触点を営業パーソン自らが作り出すためです。プル型営業に比べて、自分たちから接触を図るため、その効果も制御がしやすい状態となります。

これは、人的リソースが少ない中小企業にとっては、自分たちでコントロールしながらアポイントメントの獲得数の成長ができるため大きなメリットとなります。

アポイントメントの獲得のターゲットを絞れることが2点目のメリットです。これも営業パーソンが自ら連絡をとるため、狙った顧客、または自社にとって長く使ってもらえる顧客などメリットの大きな顧客に絞って連絡ができる強みがあります。

また営業パーソンによる人的な関係性による接点づくりや、その後の関係づくりも人的になされる営業手法であるため、信頼関係の高い顧客は、成約後もトラブルが少なく、結果として事業の安定性につながる効果もあります。

潜在的なニーズを掘り起こせることもメリットの一つです。そもそも情報を収集していなかったり、その時に興味がなかったなど、様々な理由で自分から動いていなかった顧客に対して積極的にアプローチをかけることで、顧客が知らなかった効果や情報を知ってもらい、それをニーズにつなげられるところはプッシュ型営業のメリットになります。

push型営業のデメリット

プッシュ型営業にもデメリットはあります。以下の3つが大きなデメリットになります。

  • 営業が属人的になりやすい
  • 営業が非効率になりやすい
  • 会社の印象が悪くなることがある

プッシュ型営業の大きなデメリットの一つは、営業が属人化しやすい点です。プッシュ型営業では、接点がない状態から信頼を獲得するまでが非常に難しいと言われています。そのため、営業パーソンはこの信頼の獲得のために様々なノウハウを長く働くことで身に着けます。

この信頼を獲得する方法は、個人の特技や性格も用いた手段となるため、極めて属人化しやすい部分です。そのため、一人の営業パーソンがプッシュ型営業で売り上げを出せても必ずしもほかの人が同じやり方で成果をあげることができず、企業としては人を育てても再現性がない投資となってしまいます。

営業が非効率になりがちになる部分もプッシュ型営業のデメリットです。特に業界が成熟している場合は、顧客の奪い合いが起きてしまい、興味のない人にアプローチを多くかけてしまい、結果として営業活動における生産性が良くない状況に陥るケースがあります。

会社の印象が悪くなることもプッシュ型営業のデメリットの一つです。アポイントメントの獲得のため、積極的に営業パーソンがアプローチをかけるため、アプローチをかけられる側からすると業務時間中や休みの日にも興味のない話をされるという迷惑を被ることにも繋がります。

この際、インターネット等がなければ悪い印象が広まることは少なかったのですが、今ではこういった印象はすぐに広まる可能性があります。電話であれば、電話番号がさらされ、しつこい電話として共有されてしまうなど、かえってアポイントメントの獲得ができづらくなる状況を作ってしまうこともあります。そのため、プッシュ型営業を行うときは、ターゲットを絞りながら、適切にアプローチすることが重要になります。

pull型営業の具体的な手法

メディア プル型

ここまで、プル型営業、プッシュ型営業それぞれの特徴やメリット・デメリットを紹介してきました。ここからは、それぞれの具体的な手法を紹介します。

まずは、プル型営業の手法をご紹介します。プル型営業では、人的リソースが難しい点でもあるので、特に、中小企業では、特にリソースを見極めた上でご活用ください。

プル型営業の具体的な手法は次の3つです。

  • メルマガ・手紙
  • オウンドメディア
  • セミナー

メルマガ・手紙

プル型営業の具体的な手法の中でも、比較的人的リソースが少なく運用できる手法になります。やり方は簡単で、メールアドレスを取得済みの人に対して、メールで情報提供を行うとメルマガになります。

それに対して、住所などの情報を知っている場合は、手紙やシーズンカードを送ることで情報提供を行うことができます。

このように、比較的プッシュ型営業でも使えるツールを用いて、伝える情報や対象も絞れるため、運用がしやすい手法となります。

この手法の場合、メールアドレスの取得や住所の取得は、エキスポや広告など別手段で集める必要があることには注意点が必要です。

オウンドメディア

オウンドメディアとは、自社で運営するメディアのことです。企業の情報やアポイントメントの獲得対象者が求めていそうな情報をウェブサイト上で発信することで、資料のダウンロードなどを行ってもらう手法です。

SEO対策や検索サイトでの広告、SNS運用などと併用して行うことが一般的であり、併用することで効果が生まれます。

良い点は、エキスポなどの外的要因によってメールアドレスなどの情報を取得するのではなく、自社サイトに来た人にメールアドレス等の情報を残していってもらえる点です。一方で、その運用には多くの知識が必要になり、また効果が出るまでの時間も長くかかる手法となります。

セミナー

3つ目の手法は、セミナーです。オンラインでもオフラインでもセミナーを開くことで、情報発信を行うことができます。セミナーで、商材に対して少しでも興味のある人に参加してもらい接触できるところが良い点です。

上記の2つの手法よりは、セミナー前後での打ち合わせ等がしやすく、アポイントメントの獲得につなげやすい一方で、時間の制約や移動が伴うこともあり、参加してもらうまでのハードルが高くなります。

push型営業の具体的な手法

プッシュ型 営業

プッシュ型営業は、古くからの営業のやり方であり、多くの手法があります。ここでは、次の3つをご紹介します。

  • 電話
  • 訪問
  • メール・お問い合わせフォーム

電話

ターゲットとなる対象企業に電話をかけていく方法になります。その際、電話をかけるリストは、購入したり自社で作成したりします。

担当者や対象者につないでもらえるかや、そもそも連絡時間でつながるかなど、様々なハードルがありますが、プッシュ型営業では定番の方法です。

訪問

コロナが広まるまでは、多く見られた営業手法です。特に保険業界やや通信機器販売では使われることが多い手法です。信頼を得る一番の方法は、会って人となりを知ってもらうことから始まるといっても過言ではありません。そのため、訪問は、信頼関係の構築が鍵のプッシュ型営業との相性が良いです。

メール・お問い合わせ

リモートワークが増え代表の電話からつないでもらえない状況や、コロナで訪問型の営業も衰退しているなかで、現在最も行われているプッシュ型営業の手法ではないでしょうか。

メールアドレスのリストを購入したり、自社で作成し、送付するのがメールでのプッシュ型営業です。メルマガ都は異なり、ここではいきなり商談を申し込むのが特徴です。

また、企業のホームページが増えた中で、多くなっているのがお問い合わせフォームから商談を申し込むプッシュ型営業です。これもメールと同じく自社でリストを作るなどし、対象の企業のお問い合わせフォームから商談を申し込む方法です。

pull型営業とpush型営業がおすすめの業界

会議

今回は、プル型営業とプッシュ型営業のそれぞれの特徴や手法をご紹介してきました。取り入れる際には、それぞれの手法においてメリット・デメリットがあり、注意点があります。

この業界はプル型営業がおすすめというような区別が難しいのがこの営業の分け方となります。

一方で、プッシュ型営業が必要ない企業は存在しないというのは言えます。どの企業にも潜在的な顧客は存在し、そこにアプローチすることで、収益を増やすことが可能です。そのため、プッシュ型営業はどの企業も取り入れる施策となるかと思いますが、会社の評判が落ちてしまわないようにするなどデメリットを防ぐ注意が必要です。

プル型営業は、時間や人的リソースが大きくかかる反面、導入をして、計画的に運用ができると大きな効果を生み出します。しかし、その投資をどのように行うかは適切な判断が必要になります。特に人的リソースが不足しがちな中小企業では、導入の手順はじっくりと考える必要があります。その一方で、営業の属人化を防ぎ、会社を組織として強くする営業の手法にもなります。


プル型営業、プッシュ型営業の違いなどをご紹介しましたが、重要なことはそれぞれの特徴やデメリットを知りつつ企業の状態に併せて、自社の営業スタイルを確立することです。

皆さんの企業で、営業スタイルを見直す際にこの記事が参考になれば幸いです。


【ライター】
田中 大貴
株式会社 Urth 代表取締役CEO

大学では、建築学を専門としながら、2018年4月からは早稲田大学で「ビジネス・アイデア・デザイン(BID)」を受講。 その後、文科省edgeNextプログラムの一つである、早稲田大学GapFundProjectにおいて2019年度の最高評価および支援を受け、起業。 早稲田大学建築学科では、株式会社エコロジー計画とともに、コンサートホール、宿泊所の設計、建設に取り組んだ。現在は、「〇×建築」をテーマにwebサービスの開発、営業から、建築の設計及び建設物の運営に関するコンサルタントまで幅広い事業を行う。


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