コロナ禍における外出自粛に伴い、多くの方が運動不足に陥っているのではないでしょうか。実際に、世界16カ国の16,000人以上を対象に実施したある調査では、10カ国の約1/3が 「コロナ禍のために運動不足」 と回答しています。

引用元:イプソス株式会社『コロナ禍による健康上の懸念、運動不足と不安がトップ=世界の世論調査結果』
https://www.ipsos.com/ja-jp/more-suffering-under-exercising-anxiety-other-health-concerns-due-covid-19-poll



世界中で叫ばれる運動の問題は、実は仕事をする上で発揮される集中力や生産性に大きく関わっています。海外でも、著名な経営者がこぞって筋トレを導入しているようです。そこで今回の記事では、運動をすることの大きな2つのメリットと、具体的にどのような運動を生活の中に取り入れれば良いかを解説していきます。


筋トレ・運動による2つの大きなメリット

筋トレ・運動には数多くのメリットがありますが、仕事をする上では特に2つのメリットが挙げられます。仕事において、より高い質と量を生み出すためには、その基盤となる体のコンディションを高い水準で維持する必要があるのです。全ては体から始まると言っても過言ではありません。では、運動の2つのメリットをご紹介します。

1:集中力が増す

1つ目は集中力の向上です。集中力を発揮するためには、脳のエネルギー源である酸素を多く送り込む必要があります。言い換えると、集中力が高い状態というのは「脳に酸素が多くある状態」ということです。

運動をすると筋肉が刺激されて血の巡りが良くなります。血の巡りが良くなることで、血中に含まれるヘモグロビンが酸素を運び、脳に行き渡らせます。これにより、集中力があがります。時系列で説明すると以下のようになりす。

1:運動をする。
2:筋肉が刺激される。
3:心臓のポンプ機能が強く作用する。
4:全身を巡る血液量が増加する。
5:必然的に、脳にも多くの血液が流れ込む。
6:ヘモグロビンから脳へ酸素が供給される。
7:脳に酸素が多くある状態となり、集中力が向上する。

こういった原理で運動をすると集中力が上がります。

2:精神状態が安定する

2つ目は精神状態の安定です。ここで言う精神状態とは、自律神経の状態を指します。自律神経とは、呼吸・体温調整・代謝などを行う神経のことで、意思とは関係なく、自動で24時間働くものです。自律神経は交感神経と副交感神経があり、交感神経は、体の活動に関わる神経。副交感神経は、体の休息に関わる神経です。

多くの現代人は、この二つの神経のスイッチの切り替えが上手くできていない状態にあり、自律神経が乱れている状態と言えます。神経の乱れが起きると、交感神経が活発な時は神経質でピリピリして、副交感神経が活発な時には無気力な状態になってしまいます。

この乱れは、メリハリのない生活の連続によって生まれてしまいます。この状況を打破するには、やはり運動を行う必要があります。運動中は、交感神経が有意に働き、活動を促進してくれます。そして、運動後は、体を休めるために、今度は副交感神経が有意に働いてくれるのです。このように、運動によって神経のメリハリがつき、自律神経のオン/オフスイッチがスムーズに働くようになります。

スムーズに働くと、交感神経が有意な時には、高い生産性を発揮し、副交感神経が有意な時には体も脳も十分にリラックスした状態で休むことができます。なんとなく毎日だるい、そんな慢性の疲労も運動は解消し、メリハリのある生活をもたらすことができるのです。


どんな筋トレ・運動をすれば良いか?

推奨される運動には、短期的なリフレッシュを目的とした運動と、長期的な生産性向上のための運動の二種類があります。


①短期的なリフレッシュのための筋トレ・運動

なんだか集中できない。眠気が覚めない。これらは脳の酸素不足が原因です。短期的な運動では、脳に酸素を送り込み、その場でのリフレッシュを目的とします。具体的には、1時間に1度、5分程度の「散歩」やその場での「スクワット」がおすすめです。どちらの運動も、先に述べた「集中力が増す」メカニズムによって、脳に酸素を送り込み、リフレッシュすることが可能です。

散歩では『少し早く、足幅を広く』歩くことが推奨されます。
早く歩くことで筋肉を刺激する運動強度が上がり、足幅を広くすることで刺激される筋肉の量が増えます。筋肉が刺激されればされるほど、脳に酸素が供給され、リフレッシュが可能です。

スクワットでは『ゆっくり下げて、ゆっくり上げる』ことが推奨されます。

人体で最も太く大きい筋肉である大腿筋群に、ゆっくり長い時間をかけて自分の体重をかけ、刺激することで、他の筋肉を刺激する以上に効果があります。意外とゆっくりスクワットするのは辛いのですが、その分、脳にも酸素が供給され、リフレッシュできるでしょう。雨の日や狭い空間ではスクワットがおすすめです。

②長期的な生産性向上のための筋トレ・運動

基本的な集中力を上げ、自律神経を整えるためには、継続的に運動を行うことが必要です。「心拍数が上がり、軽く汗がでる程度の運動」を、「30分〜60分、週に2、3回」行うことが推奨されています。

具体的には、有酸素運動がおすすめで、ジョギング・ランニング・サイクリング・スイミングなどが挙げられます。
1ヶ月程度継続をすると、慢性の疲労も取れ、比較的簡単に集中できるようになります。


経営者、サラリーマンが筋トレ・運動を取り入れるライフスタイル提案

ここまで、運動のメリットやどのような運動を行うと良いかについて記載してきましたが、運動において最も難しいのは『継続』だ、という人は多いのではないでしょうか。

そこで最後に、日常生活の中に運動を取り入れる例を挙げたいと思います。

・どんなタイミングで
・どんな運動を
・どの程度実践すべきか

具体的に、朝昼夜に分けて解説していきます。

朝(会社に行く前)

朝は「30分程度の散歩」を推奨します。

長い時間をまとめて取れる朝には、有酸素運動を継続的に取り入れ、散歩習慣をつけるのが比較的容易です。

また、太陽の光を5分以上浴びることで、幸せホルモンとも呼ばれるセロトニンが脳内で分泌され、気分が爽快になり、日中の集中力が高まります。セロトニン分泌も考慮すると、朝の散歩は最適といえるでしょう。

雨が降っている場合は、窓際での足踏みがおすすめです。
太ももを床と並行になる以上あげ、手も大きく振りましょう。
これを意識して15~30分程度行うだけでも違ってきますよ。

窓際に立つのも効果的です。雨といえど太陽の光は差し込んでいるので、セロトニン分泌を助けます。

昼(オフィス内)

昼はリフレッシュを目的とした短時間での運動を推奨します。

服装や靴が職場環境に依存するため、一概には言えませんが「仕事の合間にリフレッシュしたい時」と「昼食時」についてご紹介します

仕事の合間
なんだか集中できない、眠気がひどい。そんな時には5分程度の散歩かゆっくりスクワットを推奨します。リモートワーカーの方は家の中をぐるぐるお散歩。

その場スクワットはやり易いですが、オフィスの方は人目が気になったり、服装的にスクワットはできない場合もあるでしょう。その場合、最低でも1時間に1度立ち上がり、軽く伸びを行なってください。座り続きで股関節周りに滞っていた血が流れ、リフレッシュできます。また、トイレにいく際に「大きな一歩、少し早歩き」を意識すると通常の歩行よりも多くの筋肉を強く刺激できるのでおすすめです。

昼食時
時間がある方は短時間でも良いので外に出てウォーキングができるといいですね。ウォーキングの運動強度は高くないので、昼食後まもなくであっても問題ありません。オフィスから少し離れたお店にランチしに行くのも一つの手です。

夜(会社帰り)

時間が取れる場合、30分~1時間程度の有酸素運動を推奨します。

よく聞く話に「2駅前で降りて歩いて帰る」というものがありますが、靴がスニーカーや運動靴といった歩き易い靴でない場合は、あまりおすすめできません。特に、革靴やヒールでのウォーキングは足を痛める可能性があるので、継続的に行う上では靴選びは慎重に。

夜の運動で注意したい点

夜は寝る3時間前に激しい運動を行うと自律神経乱れるため注意が必要です。運動をすることで交感神経がONになり、本来は睡眠中に活躍するはずの副交感神経が働かなくなってしまいます。寝たのに疲れが取れない、という現象が起きやすいので寝る3時間前は運動を控えてください。

朝・昼・夜と紹介しましたが、何か取り入れられそうな運動はあったでしょうか。

全てのタイミングで運動するのではなく、まずは日々の中で、どこかに運動を取り入れ、継続してみることをおすすめします。


まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回は経営者及びサラリーマンが筋トレ・運動をすべき2つのメリットと運動の取り入れ方についてご紹介しました。筋トレ・運動をしていくことで、集中力や生産性を向上させるだけでなく、日々の満足度が向上すると幸いです。


【ライター】
三富 大雅
早稲田大学スポーツ科学部
実践起業インターン【REAL】2期生
ばあごはん副代表

大学では、健康行動科学を専攻、特に「座り過ぎが身体へ及ぼす影響」について研究。早稲田大学×株式会社ビジネスバンクグループによる実践的な起業プログラム『実践起業インターンREAL』の二期生。シニア×学生のコミュニティ創生を目指す”ばあごはん”の副代表を務める。


【監修】
野田 拓志
株式会社 ビジネスバンクグループ
経営の12分野ガイド
早稲田大学非常勤講師

大学時代、開発経済・国際金融を専門とし、 その後「ビジネス×途上国支援」を行う力をつけるために一橋大学大学院商学研修科経営学修士コース(HMBA)へ進学。 大学院時代に、ライフネット生命の岩瀬氏や元LINEの森川氏に対して経営戦略の提言を行い、そのアイデアが実際に事業に採用される。 現在は、「社長の学校」プレジデントアカデミーの事業部長として、 各地域の経営者の支援やコンサルティングを行う。2017年4月からは早稲田大学で非常勤講師として「ビジネス・アイデア・デザイン(BID)」を行う。


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