「経営者に告げる、すべてのビジネスは「実験」である」


著者の
光本勇介(みつもとゆうすけ)氏は
2017年に「CASH」という
アプリをリリースして
世間を驚かせた。


目の前のアイテムが
一瞬でお金に変わる。
商品状態などの説明を
記載することなく
モノの写真を送るだけで
現金が手に入る。


フリマアプリや
リサイクルショップでは、
ユーザーの商品説明や
店員の査定によって
品質が担保されている。


したがって
常識的に考えれば
「CASH」においても、
後々に問い合わせが来て
説明が必要になるという
結論に行き着くだろう。


しかし、
著者は世に蔓延る常識を
「実験」することに
面白さを見出している。


光本勇介氏は、
最短2分で
オンラインストアを作れる
サービス「STORES.jp」
などを運営する
株式会社ブラケットを創業し、
2013年8月に
株式会社スタートトゥデイに売却。


2016年10月に
スタートトゥデイ社に対して
MBOを実施し、
ブラケット社の取締役会長に就任。


2017年2月に
株式会社バンクを創業し、
「CASH」やお金がなくても
後払いで旅行に行くことが
できる「TRAVEL Now」
などをリリースし
世間を賑わせてきた。

本書は、常識に囚われず、
新しいサービスを編み出したいと
考える人に面白い知見を
与えてくれる一冊である。

【実験思考のポイント】======

 1.実験思考とは?

 2.狂ったビジネスは
     こうして作る

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【1】経営者に必要なスキル、実験思考とは?

著者にとって、
すべてのビジネスは
「実験」である。


「これをやったら
どうなるんだろう?」
「たしかにそれ、
おもしろそうだね」
と多くの人が思いつくが、
実行されていない
アイデアが多くある。


「実験」とは
そのようなことを
実際にやってみること。


「実験」をすると
どのような反応が
起こるのか、
著者はただその結果を
見たい好奇心に
突き動かされている。

「実験」である以上、
成功だけでなく
失敗もある。


ただ、著者にとって
実験の成否は二の次。
世間の反応、
すなわち実験結果を
見ることが何よりも
重要なのだ。


失敗も無駄ではなく、
ひとつの検証結果である。
その検証結果は
実験を行った者のみが
知る情報となり、
「価値」になると
考えている。

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【2】経営を加速させる1つの手法、狂ったビジネスはこうして作る

光本氏が言うには、
「実験」してみたくなる
斬新で、魅力的な
ビジネスをどうすれば
生み出すことが
できるのか。

重要な点は以下の2点である。

①全力で「普通の生活」をする

②「インターネットの人」にならない

①全力で「普通の生活」をする

スマホやパソコンに
四六時中向き合い、
デスクで頭をひねっていても、
革新的なアイデアは
思いつかない。


全力で「普通の生活」を
していると、
世の中不便なこと
だらけだと気づく。


例えば、
「予約しているにも関わらず、
病院で長時間待つ」というもの。
長時間待たされる上に、
他の病院に回されること
だってある。


多くの人が当たり前に
感じていることでも、
一歩引いて見てみると
おかしなことは
たくさんある。


経営者が忘れがちな
普通の人の生活感覚、
当たり前(マス)の感覚
を持つことで、
ふと気づいたことのなかに
ビジネスチャンスを
見出すことができる。

②「インターネットの人」にならない

著者は「ネットから離れる」
ことを意識している。


インターネット業界の人は、
リテラシーが高すぎる。
ゆえに、自分たちの考える
0.001%の物事を
「これが世の中だ」と
捉えてしまう。


すると、99%のマスに
刺さるサービスを
作ることができなく
なってしまうのだ。


例えば、
「少額の資金」という
ニーズである。
「少額」とは1〜2万円のこと。
世の中には、今この瞬間に
1万ー2万があれば
救われる人がたくさんいる。


そのお金で、
友だちの誕生日を
祝ってあげられる
かもしれない。


家族でディズニーランドに
行けるかもしれない。
「少額の資金」を人々は
必要としている。
著者はこれが
「マス」の感覚であると
述べている。


「インターネットの人」であると
このような感覚を
失ってしまうのだ。

***

常軌を逸したサービスは
頭だけで考えていては
出てこない。


「普通の生活」を心がけて、
違和感をスルーしないことが
大事だ。


また著者にとって、
本書も原価の390円(電子版0円)で
出版するという
「実験」である。


本書は「実験」を
後押ししてくれる
一冊となるだろう。

光本 勇介『実験思考 世の中、すべては実験 (NewsPicks Book)』、幻冬舎。

【ライター】

下境田 直也

株式会社 Urth 代表取締役
早稲田大学商学部4年

大学では商学を専攻。
2019年には、文部科学省が運営するアントレプレナー育成事業の一環であるGapFundProjectにおいて最高評価および支援を受け、起業。
現在は、フリーランス活動を支援する事業を軸に会社活動を行っている。

【監修】

野田 拓志

株式会社 ビジネスバンクグループ
経営の12分野ガイド
早稲田大学非常勤講師

大学時代、開発経済・国際金融を専門とし、 その後「ビジネス×途上国支援」を行う力をつけるために一橋大学大学院商学研修科経営学修士コース(HMBA)へ進学。 大学院時代に、ライフネット生命の岩瀬氏や元LINEの森川氏に対して経営戦略の提言を行い、そのアイデアが実際に事業に採用される。 現在は、「社長の学校」プレジデントアカデミーの事業部長として、 各地域の経営者の支援やコンサルティングを行う。2017年4月からは早稲田大学で非常勤講師として「ビジネス・アイデア・デザイン(BID)」を行う。


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