1996年国立舞鶴高等専門学校在学中に創業。レンタルサーバの事業を開始。インターネット黎明期を築き、05年には東証マザーズに上場。現在はインターネット業界の第一線で活躍しながら、投資家として若手起業家の育成も手掛けるさくらインターネットの田中 邦裕氏をお招きし『社長であり続けること』というテーマでご講演いただきました。

 

 普段語られることのない”さくら”の歴史をたどりながら”経営者に必要な要素”や”田中氏の想い”をお話いただいた90分。このレポートでは起業家として成功するために重要だと感じたエッセンスをまとめてお伝えしていきます。 

 

 

”掲示板”がすべての始まり

 人生で一番の衝撃でした。講演冒頭、田中氏は『なぜ”インターネット業界”を選んだのか』を語ってくださいました。時代は95年に遡ります。95年は”インターネット元年”と呼ばれ、Windows95が発売された年でもあります。それまではコアな知識と技術を持つ一部の者しか利用できなかったインターネットが、特に難しい設定をしなくても利用できるようになったことに感動したそうです。田中氏はまず手始めに”掲示板”のサイトを作製されました。そしてそのサイトが”外部の人からも見られる”ということに『人生で一番の衝撃』を受けたそうです。そして、心から感動したと仰っていました。田中氏は続けます。「人間は”感動したとき”に行動が産まれる」田中氏はこのとき感じた感動を広めようと心に決めたそうです。

 

 

 

 

創業のきっかけ

その後、田中氏はインターネットの世界に没頭していきます。ご自分でサイトを立ち上げ、当時社会現象にもなったアニメ:エヴァンゲリオンの情報や、海外のソフトウェア情報を日本語訳したものを配信していたそうです。当時、サーバーは学校のものを利用していたそうです。しかしサイトの人気が高まるにつれてアクセスが殺到し、ついに学校から撤去を命じられてしまいます。どうしてもサイトを続けたかった田中氏は外部でサーバーを借りる道を探します。当時、サーバーは月額2~3万円する高価なものしかなかったそうです。すでにサーバーを立ち上げる技術を持っていた田中氏は”何でこんなに高いんだ?”と疑問に思ったそうです。そこで、低価格でサーバーを提供するために”さくらインターネット”を創業されました。田中氏は続けます。ビジネスは不足感から始まるもの。”自分だったらこうやるのに” ”もっとこうなったらいいのに” そういった想いから始まったものはミッションがしっかりしている。しかし想いだけで勢いのままに始めてもうまくはいかない。事業を継続させるためにはしっかりとした事業計画が不可欠だと仰っていました。

 

 

会場の様子1

会場の様子2

 

 

ミッションと収益

さくらインターネットは”インターネットに感動して、インターネットのサーバーを自由に使って欲しい”という想いから創業されました。しかし経営を続けていく中で事業がその”想い”つまり”ミッション”からズレてしまうことが何度かあったそうです。最初に”ズレた”とき、事業はサーバーの提供だけでなく受託開発、PC販売やHP制作など、IT関連のことならば何でもやっていたそうです。そして業績は目に見えて下がったと仰っていました。ミッションがズレてしまったとき、選択肢は2つあると田中氏は語ります。1.元々のミッションへと方向を修正する。2.ズレた先を新しいミッションとして再定義する。どっちを選択するにしろ”常にミッションを意識する”ことが大事。そうしないと”をやっている会社なのか”がわからなくなってしまうと、田中氏は仰っていました。

さくらインターネットは07年に債務超過に陥りました。そのときも、回復に際して最も意識したのはミッションだったそうです。改めて自社のミッションを定義し、中期経営計画を立て直したこと。そして不採算事業、特にミッションからズレているものを切り離していくことで債務超過の状態から回復したのだそうです。

 

 

10億の壁・100億の壁

 

さくらインターネットは現在売上100億円を目前にしています。田中氏は会社が大きくなるにつれて経営に必要な知識やスキルが変化していくと仰います。田中氏は続けます。ベンチャー起業は 自動的に 成長していく。会社がある程度大きくなると 意図的に 成長させないと売上は下降していく。一般的には収益が10億・100億・500億の地点にそれぞれ”壁”があるのだそうです。そして売上が大きくなっていくと”社長の精神力だけではどうしようもなくなる”地点が現れるとのこと。その地点からに進むためには”自分より優秀な人をいかに採用するか”が重要になるのだそうです。社長の器以上に、会社は大きくならない。自分より優秀な人が居ないと、自分を超えられない。田中氏のこの言葉がとても印象に残りました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後に

”想い”から起業してください。 ”ミッション”を大切にしてください。田中氏が講演中何度も繰り返し仰っていた言葉です。決してブレない軸を持つということ。それが”社長であり続ける”ために一番必要なのだと思いました。さくらインターネットの創業から現在までの”成功”と”失敗”そして”そのとき何を考えたのか”というまさに”さくらの歴史”をぎゅっと凝縮してお伝えいただいた90分。田中氏のお話を聴いてさくらインターネットのように一つの”想い”を追求する会社を創る起業家が増えれば大変嬉しく思います。本当にありがとうございました。